ULTIMO SPALPEEN: アニメファンサブに対するワタナベシンイチ監督のコメント at Oni-Con(テキサス州ヒューストン)
ワタナベシンイチといえば、「ナベシン」の愛称とルパンの恰好とアフロが名物のアニメ監督。自身の担当する作品の中にもちょくちょく登場する辺りはさすがにちょっと自重して欲しい気もするけど、まぁいいや(笑)。次回の「ハヤテのごとく!」にも出るようで。
「練馬大根ブラザーズ」とかのセンスは凄いと思う。アレは割と好きです(笑)。
それはさておき、そのワタナベ監督がアメリカで開催されたアニメコンベンション「Oni-Con 2007」に参加し、そこでファンサブ及び海賊版についてコメントした時のビデオクリップが公開されている、という話。
全部で6つの映像が公開されているけど、とにかく一貫しているのは「違法なアップロード行為はやめてほしい」という主張。クリエイターとしては当然の発言だし、言う権利もある。それだけに、クリエーター自身の声として非常に説得力が感じられた。
また、最近同様の話として、「アニメ制作者がネットラジオでニ○○○動画を痛烈に批判」という話もある。こちらは、ニコニコ動画をはじめとした動画アップロードサービスに対して向けられた物だけど、実際に聞いてみたところ主張としてはほぼ同様のもので、違法行為に対する手厳しい批判となっている。
ここ最近、「YouTubeやニコニコ動画のおかげでアニメ作品が売れる」と一方的に断定している発言がネット上で散見され、下手すると「著作権のが悪い」「法律が間違っている」などという意見も見られる。
もし仮に自分が何らかの有料作品を作ったと仮定した時、目の前に堂々とそんな発言をして勝手に自分の作品をアップロードしてる人間がいたら、とりあえずぶん殴ると思います。ぶん殴っていいと思います。
少なくとも、自分が金銭的利益を得るために作った物が勝手にばらまかれて嬉しくはない。更に言えばそれで不利益を被ったとしても、その発言主が責任を取る事は一切無いので余計にタチが悪い。結局その発言主とその作品得た人間は、他人にリスクを背負わせ、自分が一切損することなく利益を得る事になる。
仮に法律が間違っていて改善の余地があるとしても、他人の作品を自分勝手にする事を許容する内容へ変更される事にはならないだろうと思う。それはつまり、自分の作った作品が何らかの形で勝手に使われる事を許容しなければならない事を意味するけど、本当にそんな事されて嬉しいのかと問いかけてみたい。とりあえず自分は嫌です。
少なくとも権利の及ぶ範囲の差こそあれ、自分の作品をどのように配布するかの選択はその権利者が自由に行使できるべきであって、外野が好き勝手に主張する物ではないはず。MADムービー等に関しても、作られて喜ぶ人もいれば作ってほしくない人もいる、という事。
そもそも、売り上げの正確な数字を持っている権利者が「止めろ」と主張しているのに、「いや、こっちの方が売れる」なんて言うのは滑稽を通り越して呆れてしまう。それはただ単に「無料でコンテンツを消費する」という『既得権益』を守りたいだけの意地汚さしか感じない。実際に売れるのだとすれば、権利者だってもう少し柔軟に対応するだろうさ。少なくとも商売に関しては向こうの方が知識も経験も豊富なのだから。
とりあえず無根拠に権利者を批判する前に「無料でアニメが見たいです」「MADムービーが見たいです」と、自分の立場から主張する事の方がまだ建設的。そちらの方が余程しっかりした根拠があるのだから。アニメDVDの値段の高さを批判するのはその後から。
ニコニコ動画では、アフェリエイトを通して何人の人間が商品を購入したかカウントされ、それが数字として見られるようになっているので、アレを根拠とした意見を見かける。確かに目に見えて数字が出るので「実際に売れている」と言う事はできる。
でも逆に、「いつでも見られるから買わなくていい」と考えた人間がそれより少ないという根拠は見たことがない。多くの人が動画サイトで済ませることで、レンタル店やネット配信サービスに対する需要が落ち込み、そういったサービス業に作品が買って貰えなくなったと仮定した時、発生する不利益がどれほどの物かという数字も見たことがない(それらは、ニコニコ動画からの売り上げで補填できるレベルの数字なのかどうか)。
あの数字を根拠に一方的に「売れる」と断定するのは無理があると思う。
また、「ULTIMO SPALPEEN: 「アメリカでアニメDVDが売れなくなってきた理由は」――Dub ReviewのM.C.Wilsonさんの意見」等の記事に見られるように、P2Pでアニメが数多く流通している米国では、コンベンションに参加するアニメファンが増えている一方で、DVDの売り上げが落ちているという経緯があり、ついこの前米国のアニメ販売会社大手のジェネオンUSAが市場から撤退するという結果を迎えている。
この状況を見て、動画サイトで流通する事が市場にとって良い結果をもたらすのかどうかは甚だ疑問。
個人的に、この問題は米国で一般的にアニメが流通してない状態でファンサブが台頭してきた事で「アニメは無料でダウンロードするもの」という文化や考え方が根付いてしまった事が要因であると思っている。
これと同じで、動画サイトに著作物が数多くアップロードされる事で、カジュアルコピーが自然の物として受け入れられてしまい、「著作物に対価を支払う」という考え方が廃れてしまう事を個人的には心配している(そういう意味で、DRM技術は「著作物は保護されるべき物である」という意識を持たせるという役割において、それなりの意味を持っていると個人的には考えている)。
それが時代の流れだと言うのであれば、サービス・作品に対して対価を支払わないことが当然の物として受け入れられるなんて、何だかさもしい時代だなと思う。
ひっくるめて言うと、著作権の及ぶ範囲で権利者が認めていない著作物を配布する行為はどんなに言い繕ったり屁理屈をこねたところで正当化されることは無いと思うし、それが良い結果をもたらすともあまり思わない(著作権の有効範囲や期間云々の話は置いといて)。
欲しいならば対価を支払う。対価を支払うに値しないと思うなら欲しがらない、もしくは正当な対価かどうかを考慮する。欲しい物は何でも必ず手にはいると勘違いしない。手に入らないからといって我儘を言わない、もしくは手に入れるために努力する。
とりあえず、ユーザーとして最低限その程度の前提はわきまえておきたいと思う。
関連
ULTIMO SPALPEEN: アニメコンベンションの参加者は増えているのに、アニメDVDの売り上げが落ちている理由は――Dub Reviewメンバーによる会話
追記
a href=”http://www8.big.or.jp/~vid/Diary/20071031.html#p11″>- Empty Talk -(2007-10-31)より。ご意見ありがとうございます。
正直、TVで自分で見た(一部見逃した)とか、ネットで話題になったとか言う作品でなければ、レンタルすら触ろうとしない人間っていると思うのよね。私がそうだから。どういう形であろうと「ただだから見る」と言う人間。映画ですら、よほどでないとレンタルですら手に取らない。
「視聴した人間」を多くすることで「潜在的顧客を増やしている」というのが「無い」と言うのは、やっぱり無いと思うわけで。
そういう人間は、最初からどういう形であれ「買わない」と思うのよね。レンタルもしない。
「ただだから視聴する」けど、そうじゃないなら一切触らない。
確かに潜在的な顧客を増やすという役割が無いとは言えないだろうと思います。ただ自分には、潜在的な顧客を獲得する「手段」が最終的に良い結果をもたらすのかどうか、という点は気になります。新規に獲得した顧客以上に失う顧客がいるのではないか、という懸念です。具体的には、Vidさんとは逆に有料でもレンタル等で見ていた層が、無料の動画アップロードサービスに流れている人間の可能性です。
もちろん明確な数字が出るわけではないので、こればっかりは何とも言えないのですが。「初音ミク」のように需要を喚起する製品があるのも一面としてある事は確かですし、その点に関しては評価できると思うのですが、金を払うよりは無料の方がいいと考える事が自然の発想である以上、無料で野放しに流通するコンテンツに関してはどこかにしわ寄せが来ているのではないかと思えてしまいます。
肉を切らせて骨を断ったように見えて、実は骨までしゃぶられているのではないか、と。
で、これらの「複製問題」とは別にMADテープを筆頭とする「素材として利用している二次著作問題」があると思うのよね。
二次著作は少なくとも原創作者とは別の「創造性」が入っているわけで。
日本著作権はパロディを「認めていない」という根本的問題ね。
そういうMADと単純複製を同一視して語るのは、なんか違う気がしてならない。
確かに、二次著作と同一視して語るのは浅慮であったと反省しています。
正直なところ、二次著作辺りまで来ると曖昧かつ複雑で非常にややこしくて、自分程度の浅知恵では手に余る感じです…。
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