(株)小学館を提訴。 雷句誠の今日このごろ。/ウェブリブログ
金色のガッシュ!!:作者の雷句誠さんが原画紛失の小学館提訴(まんたんウェブ) – 毎日jp(毎日新聞)
何やら大騒ぎになっている、「金色のガッシュ!」の作者が小学館を提訴した話。
個人的に、「ガッシュ」は、やたらと熱い展開と馬鹿なギャグ(「ちちをもげ」のセンスは凄い(笑))が好きな作品だった。ただ、終盤のグダグダ感がイマイチだったなぁーと思ってたら、裏にこんなドロドロした話があったのか…。
雷句氏の言い分のみで一方的に判断することもできないけど、訴訟を起こすのだから相当鬱積した物があったであろう事は想像に難くない。少なくとも、原稿を紛失するという事実が存在している事だけは動かせない。また、漫画家に対する暴言はとても擁護することはできない。
それから、関連記事を色々見ると編集側のあまり良くない噂が多く見受けられ、今回の件は小学館側に大きな非があるのかな、という印象を受けた。
雷句氏は、しばらく前にチャリティーオークションに自分の絵を出品してたそうだけど、今回の訴訟のために原稿の価値の裏付けが欲しかったのだろうなぁ。チャリティーオークションという場でその意図はどうなんだろうと思わなくもないけど、まぁ出品者の意図とオークションの結果に関係は無いわけだし、別にいいか。
今回特に強く印象に残ったのは以下の文面。
(4)そこで一番怖いのは編集者が漫画の原稿と言う物をぞんざいに扱い始め、「どうせ紛失したって、原稿料払い直せば事は済むんだろ?」と、思われ始める事です。
漫画の原稿と言うのは、漫画雑誌の編集者にとってももっと貴重に扱われていたはず。それがここまで酷い扱いになっては行けないのです。
もし私がこの金額で了承の判を押してしまったら、これより先、白黒原稿なら約1倍の金額で全ての賠償金が設定されてしまう。自分の白黒原稿は1ページ13,000円、そして、自分より先の漫画家には「補償金」と言う、意味の分からないお金が消え去り、いわゆる賠償金約1倍のお金、すなわち13,000円のみになる可能性は大きい、さらに自分より若い新人の漫画家は、 「雷句誠がこの金額で納得して、君が文句を言うのはおかしいだろ?」 と、何も言えなくしてしまう事も出来るのです。それだけは絶対に防がなくては行けません。
この点について問題意識を持ち、それを正そうとする考え方については素直に感心するし、自分としても見習いたいと思う。後に続く人間に対してより良い道を作ることは、成功した名声や力のある人間でなければ難しい。そういった安泰な立場の人間が、保身に走らず率先して行動するのは他者の指針となり、意識作りにも繋がる。
この訴訟の結果がどうなるのか分からないけど、漫画家と編集の関係が改善される事を願いたいです。
ちなみに、雷句氏の元には仕事のオファーが殺到しているそうなので(参考:小学館とは決別?「金色のガッシュ!!」作者にオファー殺到 – MSN産経ニュース)、今後の事について心配する事は無いのだろうと思う。まあ、一度は日曜朝にアニメ放送され、結構な人気を博した作品を作り出した作者だけに、普通の出版社は放っておかないだろうねぇ。自分としてもこの人の作品は割と興味があるし。
ところで、今回の事件で知ったのだけど、漫画原稿は(契約にもよりけりだろうけど)基本的に漫画家に権利があるのね。サンデーぐらい大きな出版物だと、後々面倒が無いように漫画家本人から譲り受ける形の契約なのかなー、とか勝手に思ってました。権利の話は相変わらず難しくてよく分かりません。この辺はきちんと勉強しないといけないとは思うのだけどね…。
出版者との関係において、原稿の所有権と著作権は基本的に作者にあります。出版社はそれを複製して出版するために一時的に預かっているに過ぎません。目的を果たしたら作家に原稿を返却するのが正当です。しかし、現実には出版社が長期にわたって原稿を預かる状況が見られます。後に単行本化や再録などを行う際に便利、などの理由があります。しかし、仮に重版を行う場合でも、出版社が勝手にやってはいけません(第82条の2)。
原稿が作者の所有物である以上、作者が返却を求めているのに出版社が原稿を返さなければ、不法行為で損害賠償責任を負います。
基本的に、と書いたのは、著作権(第21条から第28条までに規定する著作権)は譲渡できる(第61条)からです。新人賞の投稿規定などの例に見られるように、著作権を出版社に譲渡する、また「原稿は返却しません」などの契約をした場合は、著作権や所有権は出版社に移ります。ただし著作人格権(第18条第1項、第19条第1項および第20条第1項)は譲渡できませんから、「誰々が描いた作品」という部分は変わりません。
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