WiiがDolby Pro Logic IIを採用

ゲームショウだのWiiだのPS3だのといったニュースがあちこちで騒がれているようで。自分はゲームショウというイベントに行った事が無く、本当はちょっと行きたいんだけど、今年は新ゲーム機で大盛り上がりっぽくて混みそうだから別にいいや。
で、そういう大賑わいを見せている中で、自分はあえてひっそり報じられたこのニュースを取り上げる。新作ゲームや新ゲーム機の話なら余所行ってください。

ITmedia +D LifeStyle:任天堂「Wii」は「Dolby Pro LogicII」を採用
Japan.internet.com Webテクノロジー – 任天堂「Wii」に「Dolby Pro Logic II」が採用

「Dolby Pro Logic」というのは、マルチチャンネルサウンド関係の技術。開発はもちろんDolby社。DVDに収録されている音声エンコードのDolby Digital、DTSといった物と似てはいるのだけど、Dolby Digital、DTSとはかなり異なるエンコード技術。

Dolby Digtal、DTSは「ディスクリート型」のエンコード技術で、各チャンネルの音声は分離されエンコードされる。デコーダが無ければ音声を再生する事はできないが、デコーダがあればきちんとマルチチャンネルの音声が出力される。

一方、Dolby Pro LogicおよびDolby Pro Logic IIは「マトリクス型」のエンコード技術で、普通のデコードされたデジタル音声(普通はステレオ(2チャンネル))に他のチャンネルの音を混ぜ込んでしまう。この場合、仮にDolby Pro Logicデコーダが無くても、普通のステレオ再生環境があれば音声がステレオで再生される。さらにデコーダがあれば、混ぜ込んだ音声をマルチチャンネル音声に復元する事ができる。逆に、本来ステレオである音声をデコーダにかける事で、サラウンド感のあるマルチチャンネル出力を行う事が可能となる(ただし、初代Dolby Pro Logicではそういった使い方は考慮されていなかったという話を、確かどこかで聞いた)。
ただし、音声を混ぜるという事はその分本来の音声情報が失われている事を意味する。さらに、あるチャンネルの音声が他のチャンネルの音声に影響を与えるクロストーク現象も発生する(ただし、それは普通隣接するチャンネル同士で発生するようなので、あまり気にならないかも)。
ちなみに、DTS社にもこのDolby Pro Logicと同じようなマトリクスエンコード技術として、「DTS NEO:6」という物が存在する。

マトリクスエンコードの強みは、ステレオ環境でもマルチチャンネル環境でも、適した環境の音声を提供できるという事。任天堂は、この点を考慮した結果としてこのDolby Pro Logicの採用を決めたんだろう。
しかし不可解なのは、Wiiの出力端子。PS3のようなHDMIやS/PDIF端子といったデジタルAV出力端子がついているという事は無い。アナログ出力端子から、アナログ5.1ch出力ケーブルを生やす事ができるとか…?そんな話聞いた事ないけど、もしかしたら出来るのかなぁ…。ちなみに、Dolby Pro Logicはあくまでもデジタル情報のエンコード技術なので、アナログ出力したらデコードはできない。デジタル音声をアナログ2ch音声にエンコードしてしまう「SRS Circle Surround」という技術もあるけど(これはアナログ音声からのデコードができるようだ)、ここでは無関係。
あれ、よく見たらWiiってUSB端子があるのか。と言う事は、Wiiでマルチチャンネル出力をしたい場合は、USB接続に対応したアンプに接続して出力、という形になるのかな?というか、それ以外考えられない。

こうしてみると、確かにWii自体は面白そうだけど、多少なりともAV関連技術に興味のある身としてはこういったWiiの徹底したAV技術へのこだわりの無さは、少々物足りなく感じてしまう。せめてデジタル出力端子ぐらいはつけてもらいたかったな、と。


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コメント

“WiiがDolby Pro Logic IIを採用” への9件のフィードバック

  1. シヅ

    おお、話の合いそうな人が&こんな記事があったのですね!
    早速一言足跡書き込み~。

    自分はPS2(デジタル出力音声)とWii(アナログ出力音声)を所持し、両方5.1サラウンドを試しているのですが、この記事の通りアナログ出力のWiiの音質がかなり劣って聴こえて(あくまで二つを比べての感想)今ネットで情報を調べていた所です。
    Wii本体にはデジタル出力が付いておらず、USBから音声が繋げるケーブルも無い…ので、音声の面で他のゲーム機に負けているのかな~と思ったり。
    ある程度の環境さえあればある程度の音質は楽しめる様ですが、最高の環境と最高の音質は用意されていなかった事は、普段音楽をやっている身なのでかなり気になり、ゲーマーとしても残念に思いました。
    やっぱり何度も本体を見直しましたがデジタル出力には対応していないんですね…;
    面白い情報を有難う御座いました。
    m(_ _)m

  2. 海水瓜

    映像・音声に関してWiiは本当にこだわりが無いですね。HDMI端子を付けるといったような話も無いですし。

    コメントを頂いて色々気になったので色々調べてみたのですが、Dolby Prologicはアナログ音声に適用できる技術なんですね(参考:
    ドルビーラボラトリーズ – Wikipedia ( http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%9C%E3%83%A9%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA ))。今の今までデジタル信号にしか適用できない物だと思っていました。
    ですから、WiiのアナログAVケーブルから出力される音声はDolby Prologic IIデコーダの使用によりサラウンド再生が可能となるはず。ですが出力されている音声はステレオですから、Dolby Digitalのように完全な5.1ch出力など望みようがないですし、出力時点で2chの音声をデコードして5.1chに引き伸ばしているわけですから、「サラウンド感が増す」と感じる人もいるでしょうが、逆に言えば本来の音を加工しているために「音質が悪くなった」と言う人もいるかと思います(もちろん音源にもよるでしょうが)。
    標準でデジタル出力端子が付いていないわけですし、音声面に関して言えばWiiは間違いなく他のゲーム機に負けていると言っていいと思います。

    やはりデジタルAV技術に興味がある人間としては、Wiiの貧弱な環境は残念に思います…。

  3. 通りすがり

    WiiとDolby Prologic IIについて、調べていて流れ着いた者です。
    気になったので一言。
    Dolby Prologic IIは、そもそもは2CHの音声をデコードして5.1CHにする技術だったのですが、その後開発されたDolby Prologic IIエンコード技術により、5.0CH音声をマトリクスエンコードしてアナログのRCAピン2本だけで伝送し、デコード側で5.1CHに(0.1CHはデコード側で生成)出来るようになっています。(当然デジタル2CHでの音声も可能)
    つまり、光やHDMIを搭載していないAV機器でもDolby Prologic IIに対応している製品であれば、サラウンド再生出来るわけです。
    とはいえ、ディスクリートのDolby Degital5.1chには音の分離と言う意味では当然敵いませんが。
    任天堂は確かに、最新の技術を追い求めては居ませんが、「より多くの人が触れる事が出来るモノ」を使う事で、より多くの人に楽しんでもらおうという姿勢なんでしょう。
    そういった意味ではAV技術に力を入れていると言えると思います。

    と、ここまで書いといてなんですが、私と同じ認識で書かれている記事って、無いんですよね。。。
    どの記事も「Dolby Prologic IIはステレオ音声を5.1CH再生する」としか書いてない。
    ドルビーのHPを見る限り、私は間違ってないと思うのですが・・・。
    正直、私だけが正しくて他の人が間違ってると思う程の自信も無いです。
    やはり、私が間違ってる??

  4. 海水瓜

    自分は少し勘違いしていたのですが、そもそもDolby Prologic IIはデコード技術を指しているんですね…。

    Dolbyのページ( http://www.dolby.co.jp/consumer/home_entertainment/stereosurround.html )を読むと、Dolby Prologic II は2ch音源を5.1chで出力する事を念頭に置いた技術であると読み取れるので、「Dolby Prologic IIはステレオ音声を5.1CH再生する」でも概ね正しいような気がしますが…。

    ただ、通りすがりさんの仰るように、Dolby Prologic II エンコードされたマルチチャンネル音声をデコードすることで、サラウンド再生が行う事ができるという認識で、自分も正しいように思います。
    というか、自分はそういう技術だとずっと思っていました。

    ただ、マトリクスエンコードされているかどうかに関わらず、Dolby Prologic IIが適用できるのはステレオ音声であるため、そういった簡略化された表記が広まっているのではないか、と推測します。

  5. 通りすがり

    お返事ありがとうございます。
    Dolby Prologic II エンコードについては、以下のDolby Prologic IIxのページ内、GAMEモードのところで触れられています。
    ( http://www.dolby.co.jp/consumer/home_entertainment/exprologic04.html#block03 )

    やはり、「マトリクスエンコードされているかどうかに関わらずステレオ音声と記載されている」という認識で良いんでしょうね。

    そもそも、Dolby Prologic IIはデコード技術なのに、出力側であるWiiがDolby Prologic IIに対応とはどういう事?というのが疑問のきっかけでした。
    「Dolby Prologic IIはステレオ音声を5.1CH再生する」って、Wiiの特色じゃないじゃん!みたいな。

    海水瓜さんのお陰で、自分の認識に自信が持てました。
    どうもありがとうございます。

  6. 海水瓜

    エンコードについての情報ありがとうございます。なるほど、IIxの方に書いてありましたか…。

    あと、自分は少し質問の意図を勘違いしていたような気がするので、ちょっと補足。

    色々探してみましたが「WiiがDolby Pro Logic II技術を採用」→「本技術はマトリクスデコード技術である」という記事はあっても、エンコード技術が採用されているという記事は見あたらないです。
    しかし単なるデコード技術であるならば、2chステレオ出力のみしか行えないWiiには無関係で、ソフトウェア側の音声エンコードの問題でしかない。そう考えれば、Wiiが採用したのはそのページに書かれているPro Logic II インタラクティブエンコード技術で間違いないのではないかと思います。
    ゲームのインタラクティブなマルチチャンネル音声をリアルタイムにPL II音声にエンコードを行っていると考えれば得心が行く。

    自分は最初、Pro Logic IIが「デコード技術である」という認識が無かったので、XBOXの「Dolby Digital Live」等の仕組みから自動的に考えて「Wiiが採用したのはエンコード技術である」という認識でいたのですが、結果的には正しかった…のかな。

    あと、以前以下のようなページを書いていたので、最初からそういう前提知識があったという理由もあるのですが。
    (これらのページは古くて認識も間違っている点がいくつかあります。いい加減書き直さないといけないのですが…)

    マルチチャンネルオーディオのデジタル転送
    http://melog.info/works/article/audio.html
    DTSのリアルタイムエンコード
    http://melog.info/archives/2005/05/27034321.html

    しかし実際のところ、WiiでDolby Pro Logic II対応のゲームを遊ぶとどの程度のサラウンド音声が楽しめるものなんでしょう。キャラクター後方の音声が後方のスピーカーから聞こえてくる程度には感じられるものなんでしょうか。

  7. 通りすがり改め「サラウンド1年生」

    私はPCゲームは殆どやらない上、安いサラウンドセット(denonのM370)を買って一年、しかも買うまではドルビーデジタルが何なのかも知らなかったような(今でも怪しい)素人です。

    そういう素人耳の感想ですが、
    WiiのPro logic II対応ゲームは一つしかもってませんが、正に「キャラクター後方の音声が後方かのスピーカーから聞こえてくる程度」には感じられます。
    しかし、ゲームの場合はどうもPro logic II対応云々より、ゲームソフト側のプログラム?の技術の方が余程重要らしく、サラウンド効果はゲームによってかなり差がある印象です。

    余談ですが、ゲーム機におけるPro logic II対応ソフトというのは即ち全てリアルタイムエンコードを行うゲームと言う事だと思うのですが、そういう意味で言うとゲーム機はPS2、ゲームキューブ、PSP、と結構古くからリアルタイムのエンコード技術に対応しています。
    そうすると、Wiiの「pro logic II」対応とは何なのか?という疑問が解決していない事に気付きました。
    また、Wiiの外箱にはPro logic IIのロゴがあるので、ハード的に何か専用の機構があるのでは?と思い立ちました。
    そこで任天堂に「WiiのPro logicII対応とは他のゲーム機(例えばゲームキューブやPS2)とどう違うのか?」と問い合わせた事があります。

    その時の頂いたメールでの回答の後半に「弊社はドルビー社と契約を結び、Wii用ゲームソフトでドルビープロロジック2を使用する許諾を受けています。この契約により、ゲーム各社はドルビー社と個別に契約する事なくWii本体上でサラウンド信号を出す事が出来ます。」とありました。(回答の前半は当たり前の事だったので省略)
    ・・・担当の方はユーザーサポートで、そういう事には詳しくないようでしたが(お客様の方がお詳しいようで、とか言われてしまった・・・)Wiiの外箱にPro logic IIのロゴがあるのはこれが理由かと思いました。
    ハード側にも専用のチップを搭載しているかも知れませんが。

    何を書いてるのか良くわからなくなりましたが、参考になれば幸いです。

  8. 海水瓜

    反応が遅くてすいません…。まだご覧になっているか分かりませんが。

    Wiiの感想は参考になります。Pro Logic IIのゲーム環境が無いもので。

    電話までされるとは凄いですね…。こちらも大変参考になりました。

    ご存知かもしれませんが、一応。
    PS2にはリアルタイムエンコード機能はありません。PS2のPro Logic IIリアルタイムエンコーダとは、ソフトウェア(ゲーム内部の処理)によって実現された「後付け」的な技術です。つまり、PS2の処理能力の一部をエンコード処理に割り当てることで実現されています。
    (ちなみに、PS2タイトルの中には「Pro Logic II対応」と表記されていても、実際にはムービーシーン等で使われるプリエンコードされた音声を指している場合もありますが)
    もちろんこれはゲーム開発会社が個別に対応する必要がありますし、Dolbyと個別に契約することになるはずです。
    PSPはよく知りません。GCはWiiと同様のようですが…。

    余談ですが、PCゲームではリアルタイムエンコード処理を実現した製品はほとんど無く、5.1ch/7.1chの音声を直接アナログ出力するのが一般的です。パソコンの裏からケーブルがいっぱい生えているので結構邪魔です(笑)。そんなわけで、ゲーム機のサラウンド事情とは大分異なります。
    HDMIの普及で、近いうちにこの辺の事情が変わってくるとは思いますけどね。

  9. サラウンド一年生

    いえいえ、律儀にお返事ありがとうございます。

    正直、任天堂に電話で問い合わせはやりすぎかと後から思いましたが、外箱にロゴがあったり、ドルビーと任天堂が共に公式HPで「Pro Logic II採用」(対応だったっけ?)を謳うものですから、どうしても気になったのです。

    いろいろ参考になりました。

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