PC-98用FDイメージ一覧に引き続き、ここではPC-98エミュレータで用いられるBIOSイメージ等について、昔自分で書いた資料に少し手を加えて放出しておきます。一応自分でもあれこれ確認しているのですが、情報が間違っている可能性があります。また、資料自体は2000~2001年ごろ書かれた物に手を加えているので、情報として古い物が混じっている可能性もあります。その辺りについてはご了承ください。ただし、いくつかのリンク切れは、記録としてそのまま残しておきます。
BIOSとは、OSが起動する前に動作するPCの基本的な動作に関わるプログラムで、コンピュータに接続される周辺機器を制御したりするために用いられます。ここでは、PC-98本体に内蔵されているROM(Read Only Memory)に書き込まれたBIOSを指します。
ここで言うBIOSイメージとは、このROMに収められたBIOS以外に、同じくROMに内蔵されたフォントのデータ、FM音源に搭載されたリズム音を書き出したWaveファイルなど、ハードウェアに内蔵されたデータを書き出したファイル全体を統合して指します。
これらBIOSイメージを用いることにより、更に精度の高いエミュレーションが可能となります。これらが無くても多くのエミュレータは動作させることができますが、これらを利用する一部のソフトを正常に動作させることができません(古いソフトなど)。
必要なBIOSイメージを全て作成する(ROMから吸い出す)ためには、当然PC-98実機が必要になります。基本的にPC-98上でツールを使うだけで作成できます。機種によっては作成されるイメージに多少の差異が生じますが、それによって大きな制限を受けるのはViturl98、PC98Eなので、それほど気にしなくてもいいかと思います。
ちなみに、BIOSイメージには「ROMイメージ」、「BIOS-ROMイメージ」、「ROM-BIOSイメージ」といった呼び方もありますが(もしかしたら、多少ニュアンスが異なるのかもしれません)、ここでは表記を「BIOSイメージ」と統一します。しかし、フォントやリズム音は「BIOS」とは言わないので、もしかしたら「ROMイメージ」の方が正しいのかもしれません。ただ、「ROMイメージ」では他のエミュレータにおけるカートリッジROMと混同されやすく、他の二つは冗長なので、表記を「BIOSイメージ」とさせていただきました。
BIOSイメージ解説
- FONT.BMP
-
PC-98で使用されているフォントのイメージファイル。BMP形式なので、画像ビュワー等でフォント全体を閲覧する事ができます。対応したエミュレータはフォントファイルが存在しない場合、動作環境からフォントを取得して自動的に作成することになりますので、実際のPC-98とは異なるフォントになります。またその場合、一部罫線等が表示されないことがあるようです。PC-98環境以外で動作する作成ツールでは、そういったフォントを補完して作成してくれたりします。
ただし後述のFONT.ROMと違い、一部のソフトで用いられている1/4画フォントという物を使用することができないらしいので、両方使用できる場合はFONT.ROMを使用した方が良いようです。 - FONT.ROM
-
FONT.BMPと同じく、フォントのイメージファイル。FONT.BMPでは1/4画フォントが足りないそうなので、両方に対応したエミュレータではこちらを利用した方が良いようです。後はFONT.BMPと同様です。
余談ですが、これらフォントデータにおいて、昭和時代の機種で作成した場合は「平成」(一文字)フォントが無かったりします。 - BIOS.ROM
- PC-98のROMの中で、N88-BASIC(ROM-BASIC)が収められた領域のイメージだと思いますが、違ってたらすいません。これが無いとROM-BASICを利用するソフトが動作しません(古いソフトによく見受けられます)。
- SOUND.ROM
- サウンドBIOSのイメージ。サウンドBIOSを利用するソフトは、これが無いと音楽を鳴らす事ができません(これも古いソフトに見受けられます)。当然の事ながら、FM音源を持たない実機では作成する事ができません。また、EMM386.EXE等の仮想メモリマネージャが動作していると(EMSのページフレームとアドレスが重なってしまうため)作成することができないので、それを外しておく必要があります。
- ITF.ROM
- すいません、これが何なのか未だによく知りません。Virtual98を使わない限り、特に必要ないです。
- PC98E関連 [00000.ROM, C0000.ROM, C8000.ROM, D0000.ROM, D8000.ROM, E8000.ROM, F0000.ROM, F8000.ROM, ANK.CG, KANJI.CG, QUARTER.CG]
- PC98E用のBIOSイメージ群。他のBIOSイメージと互換性が無いので、PC98Eを使おうとしない限りはまずお目にかかる機会はありません(既にPC98Eが入手不可能となった現在においては、まず不要でしょう)。作成する機種によってはPC98Eで256色が使えたりといった差が生じるようです。ちなみに、各ファイルの役割は知りません。
- リズム音
-
PC-9801-86等の音源ボードに搭載され、バスドラム、ハイハット、リムショット、スネアドラム、タム、シンバルという6種類の音で構成された音源。エミュレータではこの6つの音をそれぞれ、2608_bd.wav、2608_hh.wav、2608_rim.wav、2608_sd.wav、2608_tom.wav、2608_top.wavというファイル名のWaveファイルとして用意します。これが無いと、意図通りの音楽が鳴らない場合があります。
しかしこのリズム音は音源に搭載されているため、BIOSイメージと同様にツールで吸い出す、というわけにはいきません。一応、Virtual98の作者のサイトの方に吸い出す方法が載せられていますが、非常に手間がかかりますので、お勧めできません。
ここは、他の方が作成されたリズム音を利用するのが無難かと思います。このリズム音は、FMP(FM音源ドライバ)のエミュレート等にも利用されますので、その有志の方が作成された物などがWeb上で公開されている可能性があります。
なお、探してみたところAutch.netさんのこちら、J’aime la musiqueさんのこちら、RetroPC.netさんのこちら(ファイル)の三カ所で公開されているのを見つける事ができました。
BIOSイメージ対応表
ファイル名 | 作成ツール | エミュレータ | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
Anex | NPII | 98E | T98 | T98N | V98 | ||
FONT.BMP | MAKEFONT MAKEFONT32 VacuumFont98 FontMaker98 CNVCG anex86のフォントを作る助っ人プログラム |
○ | ○ | × | ○ | ○ | × |
FONT.ROM | MAKEFONT32 GETBIOS ROMMAKE MKFONT |
× | ○ | × | × | ○ | ◎ |
BIOS.ROM | GETBIOS ROMMAKE MKBIOS |
× | ○ | × | × | ○ | ◎ |
SOUND.ROM | GETBIOS ROMMAKE MKBIOS |
× | ○ | × | × | ○ | ○ |
ITF.ROM | MKBIOS | × | × | × | × | × | ○ |
PC98E関連 | MKROM MKCG |
× | × | ◎ | × | × | × |
リズム音 | OPNAデータ吸出しツール | × | ○ | × | ○ | × (内蔵) |
○ |
- 記号の意味
- ◎:必須、○:対応、×:未対応・不要
- 略称一覧
-
Anex : Anex86 NP2 : Neko Project II 98E : PC98E T98 : T98 T98N : T98-Next V98 : Virtual98
参考資料
- DECAYING-MUSIC: Xnp2 簡易マニュアル
- RetroPC.NET: NEC PC-9801(1) -システムROMファイルの吸い出し-
- Kapitune’s square: T98-nextの導入
- Linux Zaurus Technical Know-how: エミュレータのフォントを作る
その他、この資料を作るに当たって様々なサイトを参照させていただきました。
追記
Neko Project II、T98-Nextに関しては、BIOS.ROM、SOUND.ROMに対応していますので、多くのソフトを正常に動作させる事ができます。特にT98-Nextは256色対応など、ハイエンド機種のエミュレータにもなりますので、かなり幅広く使えることになります。しかしAnex86はBIOS.ROM、SOUND.ROM等には対応していません。特にBIOS.ROMが使用できないということは、多数の古いソフトを動作させる事が不可能であることを意味します。Anex86は、特殊フォーマットのディスクを読み込めないこともあり、古いゲームには使えないと割り切ってしまうのが良いと思います。
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