10月7日はアニメ映画を2本連続で見てきた。「ストレンヂア 無皇刃譚」と「劇場版アクエリオン」。ワーナー・マイカル・シネマズ板橋という所で、2作品が丁度連続した時間で上映されていたもので。…というか、2作品とも同じスクリーンで上映されていたという話なんだけど。
先に見たのは「ストレンヂア」なので、感想もこちらが先。
この「ストレンヂア」は、最近CMでよく目にするので結構気になっていた。オリジナルアニメ映画はとりあえず見たいという姿勢なので、前評判を一切見ず・聞かずの状態で見に行った。
結論から言えば、見に行って大正解。非常に面白かった。
内容は、とある集団に追われている子供・仔太郎と、偶然出会った武士・名無しの話。
ストーリー自体はかなりセオリーに基づいた作りになっていて、悪く言えば陳腐、良く言えば手堅くまとまっている。しかし、この手堅い作りは2時間という尺の中で描く上では正解だと思う。仔太郎と名無しの関係や、互いの過去、周囲の人物やその環境などが違和感なく作品で描かれていたし、ストーリーの流れにも大きな破綻が見られず、非常にすんなり作品を受け入れる事ができた。特に、話の中心であり作品のテーマでもある仔太郎と名無しの関係については、この二人を重点に描いていることで、2時間という尺の中でも互いの絆が非常に強く感じられた。
細かい話をすると、仔太郎がとある事情で名無しに当たり散らす場面で、納屋の外で飯を食おうとする名無しに仔太郎が初めて謝った時、名無しがその場に腰を下ろして飯を食べようとする、というシーンがある。これは二人の関係が近付いた事がよく伝わってくるシーンだけど、こうしてキャラクターの心情を形として描く場面は作中にいくつか見受けられた。こういう細かい表現が、上手く人間関係を描き出していたのかな、と思う。
ただ、ストーリーに全く問題がないかと言われるとそうでもなく、「不老不死」設定の突飛さは少々設定として飛躍した感じはあった。また、名無しと羅狼は「偶然出会って、気まぐれで剣を交えた間柄」でしか無く、二人の関係に全く情念的な背景が無いため、最終決戦が宿命の対決という程盛り上がらなかったのも少々残念。
しかしこの作品のキモはそのストーリーよりも、全編を通して描かれた超絶的な作画にあると思う。
これを制作したBONESは、自分の中で「キレがあって見栄えのする動きを描かせたらピカイチ」という評価。とにかく、キレがあって見ていて「カッコいい」と思わせるようなダイナミックなアニメーションが光る。最近でいえば「Darker Than Black」とか。
この「ストレンヂア」では、まさにその見栄えのする動きが劇場ならではの作画で描かれる。しかも、映画全部を通して何度も何度も。アニメはドラマと違って全ての映像を人間の手で作らなくてはいけないけど、逆に言えばセンスと技量次第でどんな映像でも作り出すことができる。いかに現実離れしていようとも。この作品は正にそれをやってくれている。この作品で何度も登場する剣戟のシーンでは現実にはあり得ないような動きだけど、非常に躍動感、疾走感のある動きで、見る人間を圧倒するような凄まじい戦闘が描かれている。これは本当に見ていて凄いの一言。また、場面に応じて様々な動きを見せていたり、雪煙を使った戦闘の演出の技巧など、単純に作画が良いだけでなく、演出としてのバリエーションも豊富に描かれている点も見事。
もう作画の事ばっかり書いているけど、劇場で見ていて圧倒されてしまったのだからしょうがない。まぁ、ちょっとアップのカットが多くて何してるのか分からないシーンも結構あったのだけど、それは割と些細な問題。
あと、戦闘以外の本当に何気ない場面でも、よく見ると異様なほど滑らかに動いているシーンがたくさんあって、一体どれだけ力入れて作ってんだろう、この作品。
あと、声優に関して。メインキャラは芸能人を起用しているけど、個人的にはさほど違和感は感じなかった。むしろ名無しなどはかなり良い感じだと思う。仔太郎に関しては、まぁ子供役という事でこんなもんかなぁ。
メインキャラ以外は普通に声優さんが演技をしている。その辺りはキャラクターによく合うキャスティングなので安心。特に、名無しのライバル羅狼が山寺宏一さんだった点は○。山寺さんのニヒルな演技がキャラクターによくマッチしていたと思う。
そんなこんなで、ストーリー良し、作画良しというわけで、この作品は個人的に劇場で見たアニメの中でもかなり楽しめた作品。ただし、あまり大々的に宣伝していないので恐らく興行的にはあまり良くない結果に終わるのだろうけどね…。
ちょっとグロいシーンが多くて人間の首や腕がスパスパ飛ぶので、そういうシーンに耐性がない人には勧めないけど、それが大丈夫でアクション物が好みなら、個人的には強くお勧めしたい作品です。恐らく日本のアニメ映画でも屈指のアクションが見られる事は保証する。BONESの時代劇なんて所詮「妖奇士」、などと思ってはいけない。
追記
時間で手堅くまとめて、視聴者を飽きさせないよう適度なアクションシーンもあるという作りは、恐らくハリウッド映画を手本にしたのではないかな、と思う。
ハリウッド映画はマンネリなどと言われるけれど、それでもあの2、3時間に1本のストーリーを無理なくまとめ上げる脚本力は大した物だと思う。
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