本日公開の「銀色の髪のアギト」を見てきたので、感想。
初日から行ったのは別に期待してたわけじゃなくて、ちょうどその日の都合が良かったから。いや、期待してなかったわけではないけど。最近、GONZOは結構面白い作品を作ってくれたりするしね。
で、実際に見た感想としては…、ハッキリってしまえば良くない。
何か、その辺に転がってるファンタジー系ロールプレイングゲームをみているみたい。世界観や設定もそうだけど、ストーリー展開にもそのような雰囲気が強く感じられる。また、それに加えてコナン、ナウシカ、ラピュタ辺りの宮崎アニメに”インスパイア”されすぎている印象を受け、目新しさが感じられない。そんなわけで、作品全体に対しての漠然とした印象は、あんまりよくない。
まぁそれだけなら別にいい。目新しい物を生み出すのは難しいし、そういった既存の物を使って、どれだけ面白い話が描けるかの方が重要だと思うので。しかしその肝心の脚本は、お世辞にも良いものとは思えなかった。
何と言うか、「お約束」の要素をふんだんに詰め込んで、順番通り並べただけみたい(ちなみに、上に挙げたジブリ作品を彷彿とさせるものも結構出てくる)。そして、その要素同士の繋ぎ目の整合(要するに解説や演出)が上手くいかなくて、妙に唐突な展開が多数見受けられた、といった印象。
「森」は人間に対して何をしたいの?強化体って何?強化体になった後のアギトが、トゥーラを助けに行くまでの展開が適当すぎ。強化体の「強さ」を示す場面が本当に申し訳程度で、蛇足感が強い。「こんな山の中に~(名前忘れた)があるとは」とか言っておきながら、何でその山まで整備された鉄道が走ってるのか?「山が動く」事を感じさせる映像がほとんど見られず、言葉で言われてもピンと来なくて、どれだけ大変なのかが伝わらない。トゥーラがシュナックについていくのは分かるけど、その後「力」を諦めてアギトについてく理由に乏しい。シュナックが最後言った言葉の意味は?最後に雨が降ってきたのは何故?
とりあえず今思い出すだけでも、大小これだけ違和感を感じる点がある。他にも色々あったと思う。
一番ダメなのが、アギトがトゥーラを助けに行こうとした動機が弱くて、主人公に感情移入できなくなった点。「強化体」になってまでトゥーラに入れ込む理由も謎だし、トゥーラが攫われた時点でアギトが何をしようとしてるのか分からないから、アギトの決意が全く伝わらない。物語のターニングポイントとなるべき場面だったので、その後の展開をかなり醒めた目で見ることになってしまった。
作品全体を通してみても、こういった心理描写だけでなく、状況や背景などの色々な描写が欠落している点は多数目につく。
例えば、一緒に見に行った友人に言われて初めて気付いたのだけど、作品の冒頭で「私を一人にしないで!」という台詞があり、物語の終盤でも同じ台詞を言う場面がある。自分は言われるまで、本気でこれに気付かなかった。というのも、冒頭に出てきた台詞と終盤に出てきた台詞の結びつきが弱いし、そもそも冒頭の同台詞がどういう状況で言われたのかがほとんど説明されてないから、場面で関連づけて考える事もできない。だから、この台詞があまり意味を為しておらず、気付いた後も特に感動も何も感じず、ただ単に同じ台詞を引っかけただけに思えた。
自分がこの作品に感じたのは、大体そんな感じ。大雑把にまとめると、オリジナリティ不足、描写不足、脚本力不足といった印象だったな、と。
ただ、さすがに映像は結構綺麗だったと思う。やはりGONZOだけに、映像の作りはしっかりしてるなぁ、と。キャラクターの細かい動きもしっかり描かれていたし、CGによるロボはなかなか圧巻だった。ただ、2Dのキャラクターと3DCGの噛み合わせが上手くいかず、キャラクターが背景から浮いてしまっている場面がチラホラ見られたのは残念。
あと個人的には、このようなオリジナルアニメ映画を作ったGONZOの心意気に感心する。
この作品は、ジブリ作品や「ドラえもん」「ポケモン」「コナン」といった国民的な人気のある作品でもなければ、「NARUTO」「鋼の錬金術師」みたいな、人気の原作・アニメを持つ作品でもなく、「パトレイバー」みたいな根強いファンを持つ作品でもでもない。ましてや監督を祭り上げて客を呼ぶ「スチームボーイ」「イノセンス」みたいな作品ですらない。完全にGONZOオリジナルの劇場アニメ作品。(まぁ、主要なキャラクターのキャストが俳優になってはいるけどね。でも個人的には、声優の人が皆脇に追いやられているのは、どうも釈然としない。確かに、少しでも客寄せしなくちゃならないし、スポンサーの意向もあるんだとは思けど。何かこう、せっかくの声優の上手い演技がもったいないなぁ…って。)
今現在、いくらオタクが「もてはやされている」とはいえ、いくら何でも無名のアニメ映画に金を出すような物好きは、ほとんどいないと思う。実際、自分の行った映画館でも初日だというのにあまり客は入ってなかった。
そういった状況の中、こういったオリジナルアニメ作品を作るGONZOに対して、自分は結構敬意を持っている。まぁ多分、この作品は転けると思うんだけど(笑)、それでもこういうオリジナル劇場作品を作ったという事実は、アニメ作品の可能性を模索し、広げていく努力として、結構評価したいと思ってる。
GONZOは恐らく今一番勢いのあるアニメ制作会社だけど、こういった他の会社がやらないような活動も、制作会社の枠も越えて積極的にやってくれるので、とても興味深い。また、「SPEED GRAPHER」みたいな非常に独特なセンスのオリジナル作品も送り出してくれるから、なかなか興味は尽きない。今回はまぁ失敗だったと思うけど、GONZOには、それにめげずに是非もっと色んな活動をしていってほしいな、と思う。
余談だけど、GONZOは深夜アニメを非常にたくさん作ってくれるので、自分の中ではすっかり「深夜アニメの帝王」という位置付けになっている(笑)。
まぁそんなこんなで、この「銀色の髪のアギト」という作品に関しては、映画のチケットとGONZOの心意気は買ったけど、作品自体と関連グッズは買わない。そんな作品。
…いや、主題歌CDぐらいなら気が向いたら買ってもいいかな?
追記
になったんだけど、CMにあるのに本編に全く出てこない場面があるねぇ。
「銀色の髪のアギト 公式サイト」に映ってる映像なんか、かなりの割合で使われてない。っていうか、ストーリー上絶対に出てこない場面が。
…シナリオ思いっきり改変したな?何となくこの作品全体の駄目な脚本の理由の一端が見えたような気もする。改変前のシナリオは、どんな感じだったんだろう。案外、そっちの方が面白かったのかも。
そういえば、映画の予告で「ブレイブストーリー」の予告を見た。今回はダメだったけど、こっちは果たしてどうかな…?
コメントを残す