DTSのリアルタイムエンコード

DTS、PC用の新音声技術「DTS Connect」を発表

DTS(Digital Theater Systems)社が、「DTS Connect」という技術を発表した、という記事。これは「DTS Interactive」と「Neo:PC」という二つの技術で構成されている。
「DTS Interactive」というのは、ゲーム等のマルチチャンネル音声をリアルタイムでDTSにエンコードする技術。この「DTS Interactive」というリアルタイムエンコード技術自体は2002年の1月に行われたInternational CESで発表されていたけど、何で今頃…。ちなみに、Dolbyも同様にマルチチャンネル音声をリアルタイムエンコードする「Dolby Interactive Content Encoder」という技術を持っていて、X-BOX等に用いられている。
もう一つの技術、「Neo:PC」というのは多分、マトリクス音声のデコード技術を使ったものかな。DTSは元々「DTS NEO:6」という6.1chの音声を2chステレオ音声にマトリクスエンコード/デコードする技術があるので、それを応用して2chステレオ音声を7.1chでサラウンド出力させているんだろう。
つまりこの二つをセットで用いる事で、サラウンド出力が柔軟に行えるようになる、と。

うーん…、リアルタイムエンコードなんて、何で今頃?その前に、未だにS/PDIFがオーディオインターフェースの基準となっている事自体を何とかしろと。いつまでS/PDIFに縛り続けるつもりだ。
これはどこかで聞いた話なのでもしかしたら間違っているかもしれないけど、この光入出力(TOSLINK)の帯域幅は6Mbpsなんだそうな(同軸(Coaxial)の方は知らない)。6Mbpsってことは、16bit、192kHzの2chステレオ音声だと、6144kbpsでちょうどピッタリぐらい(CDは16bit、44.1kHz、2chステレオなので1411.2kbpsで余裕)。今時の5.1chとか7.1chとかの音声をそのまま流すには帯域が足りないんだけど(それ以前に、仕様上流せない模様)、普通はDolbyDigitalとかDTSとか圧縮した音声が流れることになる。逆に言えば、そういった圧縮音声しか流せない。だから、DVDのような最初から圧縮された音声ならば直接光端子から出力できるけど、ゲームのような圧縮されてない音声は光端子から出力することができないため、デジタル出力するためには上記のようなリアルタイムエンコードの技術が必要になる。例えば、光ケーブルによってアンプと接続した場合を図で表すと以下の通り。今回の記事の技術は、図2の「エンコーダ」の部分に相当する。

図1
図1: DVD音声を出力する場合
図2
図2: ゲーム音声を出力する場合

まぁ普通のPCはこのようなリアルタイムエンコードの仕組みなんて持ってないので、PCから直接アナログ出力することになる。
このように、ステレオ音声しかなかった昔ならいざ知らず、今となってはユーザーにとっては不便極まりない代物なんだけど、S/PDIFがいつまでもデジタルオーディオインターフェースの主役として居座っているのは多分、オーディオ会社が誰も困らないからじゃないかと思う。それどころか、ケーブルに圧縮音声しか流せなければ、出力先に必ずデコーダが必要になるためそこでライセンス料が、出力元の機器にもデコーダが付けばそこでまたライセンス料が取れる。今回のようなリアルタイムエンコード技術が採用されれば、そこでまたライセンス料が入る。あとは、S/PDIFのライセンス料という物もあるかもしれないけど、そこまではよく知らない。まぁ要するに、DolbyとかDTSとか、そういった所がユーザーに不便を強いる事で金儲けできるわけだ。まぁ、自分の妄想かもしれないけどね…。
将来的には、IEEE1394を用いたインターフェース(iLink-Auido…だったかな?)かHDMIで(あるいは、HDMI一本かも。その辺は忘れた)オーディオ信号を転送する方式がメインになるとか何とか聞いたような気がしたけど、今の様子を見るとそれはまだ先の話のようで…。今回、DTSがわざわざリアルタイムエンコード技術を持ち出してきたことからも、このS/PDIF天下が続くものと思われる。
いい加減、この時代遅れのオーディオインターフェースを何とかしろよ、と思う。そうすればこんなリアルタイムエンコードとか中途半端でふざけた仕組みなんて必要なくなるのに。

追記

TS Connectは要するに、上記のようなゲームの多チャンネル音声を出力する用途と、以下の図のように、2chステレオ音声等(CDとかMP3とか)をNeo:PCを用いて多チャンネル音声にし、それをDTS InteractiveによってDTSエンコードした上で光ケーブルを通してサラウンド出力する用途に用いられる技術。

図3
図3: DTS Connectによって2chステレオ音声を出力する場合

音声のソースがMP3等の場合、不可逆圧縮によって劣化したMP3音声にもう一度DTSによって不可逆圧縮が施される事になるので、音声の劣化は必至となる。


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