ハウルの動く城

今さらだけど、昨日「ハウルの動く城」を見てきた。まぁ今さらだし、それほど内容を細かく覚えているわけでもないので、ざっと感想でも。

元々あまり期待していたわけでもないけど、正直ここまでガッカリな内容だとは思わなかった。前半は結構面白く感じられたのだけど、後半になるにつれて意味不明な多々見受けられるようになり、強引な展開が続いていくのはいかがな物か。
突っ込みどころが多すぎて何処を突っ込めばいいのか定まらないけど、とりわけ最後のシーン、カブが王子だったとか、その一部始終を見ていたサリマンが突然戦争終結を宣言するという締めは、萎えを通り越して怒りすら湧いた。視聴者を馬鹿にしてるのか、と。そこまでして、全てをハッピーエンドで終わらせたいのか。
そもそも、この世界に置いて戦争がどういった物なのかが全く描かれていないし、それを終わらせる描写をしたところで、物語に何ら寄与する物でもない。また、カブが呪いをかけられた何物かであるという伏線はあったけど、それを物語として消化するのではなく、この見せかけのハッピーエンドを作り上げるための手段にしかなっておらず、全く意味を為していない。
これはただの想像だけど、このどうしようもないグダグダな脚本は、もしかしたらスポンサーの影響なのかなぁ…と。つまり、とにかく視聴者にハッピーエンドを見せたいという意向だったのかもしれないなぁ。しかし、そんな中でこんな脚本しか作れない側もどうかと思う。

それから、この作品に限らず最近の宮崎作品に共通しているけど、キャラクターがその行動に至るまでの思考についての描写が、絶対的に足りてない。だから、キャラクターの行動的が突発的すぎるように感じる。
例えば今回の作品で言えば、途中ハウルが髪の毛が別の色になってしまった事で落ち込んだときに、ソフィーが「私なんて一度も美しかった事なんて無いのに」(うろ覚え)と言って外に飛び出してしまうシーンがある。この時、ソフィーのその行動の裏付けとなる描写がなく、何故ソフィーがそのような行動に出るのかがよく分からなかった。確かにその前に「ハウルに攫われるかも」と言われたソフィーが「私は美しくないから大丈夫」といったシーンがあるし、ソフィーがお婆さんになって自分の顔にショックを受ける描写がある。ただそれを、泣いてしまうほどネガティブに捕らえていたような印象があまりない。だからこのシーンに関して、ソフィーの行動が奇妙に感じられた。
他にも、ハウルに対して「好き」と言う場面が唐突すぎるように感じられた、ソフィーが旅に出ると思い立つまでの過程がよく分からず困惑してしまう、といった事などが挙げられる。後者に関して言えば、例えば魔女の呪いを解きに行く云々といった台詞があれば普通に納得できるけど(旅に出る動機に、呪いを解こうと思ったというのがあったかどうかはさておき)、「もうここにはいられないわね」という台詞一つだけで、突然旅に出られても…と思う。
総じて、本の中におけるキャラクターの台詞ををのまま脚本に起こしてしまい、キャラクターの描写が欠如してしまっているような印象を受ける。またそれに伴って、キャラクターが薄っぺらい、全く魅力のない物に感じられた。

もちろん、何でもかんでも馬鹿丁寧に説明しろと言っているわけじゃない。
例えばこの作品で、ソフィーにかけられた呪いが、所々で解けるシーンがあった。結局この呪いがどう解けるのかは最後まで語られなかったけど、これに関してはその方が良いと感じた。この呪いが解ける条件が何なのかを視聴者が想像を膨らませて、それに伴いソフィーの心情を推し量ることで、色々と考える余地が生まれていた。
ところが、キャラクターに関して説明の無いまま物語が動いてしまえばどうか。その場合は、そのキャラクターが取る行動が何に基づいているのかが、さっぱり分からなくなってしまう。それでは物語を見ていても、キャラクターに全く感情移入できるはずもなく、物語としての深みも生まれない。キャラクターは呪いのような単一の機能を持つ「物」ではなく、人生、性格、感情など色々な物を持った「人物」なのだから、想像の余地を働かせるには無理がある。逆に言えば、そういった人生、性格、感情を描写する事で、人物の行動の裏にある思考を考える余地が生まれるとも言える。

『物語の脳内補完は、補助的に用いられるものであって、主軸を補完するために用いるべきではない。そんな事をさせる作品は「不完全」と呼ぶべきだ。』
…と自分は思っているのだけど、この作品はまさに「不完全」と呼ぶに相応しい物であった。

おお、見直してみたら批判しか書いてないな。何か良いところ良いところ…あぁ、背景とかハウルの城とかは、さすがに綺麗だった。その辺はさすがジブリ。
しかしそんな美術があったとしても作品としては…なのだから、脚本家の罪って重いなぁ、と。
それにしても、ラピュタとかナウシカの頃の宮崎氏は何処に行ってしまったんだろうか。


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コメント

“ハウルの動く城” への2件のフィードバック

  1. suntyu

    同感です
    彼のアニメは
    となりのトトロで終わっています。
    後は皆駄作。

  2. 海水瓜

    自分は「魔女の宅急便」までと、少し飛んで「耳をすませば」は結構好きなんですけどね(笑)。
    確かに最近のジブリは、ちょっとおかしいと思います。今回のハウルを見ても、脚本の体裁を為しているとは言い難いですし。
    子供の頃「ラピュタ」を初めて見たときには凄くワクワクしたし、今見ても面白いんですよねぇ。ああいう作品をまた作ってほしいです。

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