9月19日まで無料配信している、「よみがえる空 -RESCUE WINGS-」のTV未放映話となる第13話を見てみた。
この追加エピソードは、主人公の内田が小松救難隊に配属されるより前、メディックの鈴木が配属された頃の、本村准尉の様子を描いたエピソード。
実際見てみると、本当に追加話という感じだねぇ。内田は最後の最後に配属シーンがちょっとだけ出てくるという感じで、完全に本村准尉の話になっている。
ちなみに、同時期に放送されていた、「かしまし ~ガール・ミーツ・ガール~」が真の最終話をDVDで見せるという販売戦略をとり、「あのね商法」などと皮肉られたためか、公式ブログにおいてこのエピソードが外伝であること、制作途中で放送枠のオンエア回数が決まったため、今回のエピソードを放送から外した事が明記されている(真偽はともかく)。しかし、どうも同一視している人が少なからずいるようで…。
個人的には、作品として話の区切りをつけているのに、その上「もっと見せろ」なんて要求は、とても傲慢だと思うんだけどね。話に区切りをつけて作品の魅力を伝えているのだから、他のエピソードを見るために金を支払うのに何か不都合でも?といった感じで。未収録エピソード販売方式に対して、「アニメ業界はダメだ」などと無根拠に言いふらし、問題として一般化したがる方が余程どうかと思います。…ってな話はどうでもいいや。
…それにしても、本村准尉なんて書いても分かる人は少ないんじゃないかなぁ(笑)。自分も公式サイトのキャラクター紹介と、保存しておいた1話を見て、何とか記憶を引っ張り出したぐらいで。
しかし、TV放送話と同様に演出や描写が物凄く丁寧に作ってあるため、こういった脇のキャラクター一つだけで、とても心に響く話が作られている点は感心する。
現役引退を目前にした本村が、最後に何を思っていたのか。娘の結婚と体力の衰えによって弱気になったのだろうとか、自分に憧れてきた鈴木と入れ替わりに現役を退いてしまう事がのど元に引っかかっているのだろうとか、救出した子供に亡くなった息子の面影を重ねているのだろう…などなど。とにかく、色んな事を感じてしまう。
だから、これ、と一言で書き表せる言葉が見つからない。というか、とても一言で簡単に書き表せるようなキャラクター(およびその人生)ではない。そう感じさせるぐらい深みがある。
そういった物を強く感じるのは、考えや感情を言葉に出さずに、絵の中で色んな物を描写し、それによって言葉よりも多くの事を語っている事かな、と思う。
例えば、毎日カレンダーについていた×印(ランニングした日?)が、現役を退いた後に無くなってカレンダーが真っ白になっている場面は、今までとは違う新しい道を歩み始めた本郷の様子などが感じられる。
また、毎日ランニングで基地と家を往復していた日々が終わりを告げ、夕方に基地から歩いて帰る場面の本郷の背中は、哀愁を帯びながらも、物凄く色んな物を感じさせる秀逸なシーンだと思った。
そういった数々の描写によって人物を掘り下げている点が、この作品から多くの物事を感じさせている要因かと。
個人的には、深夜アニメでここまで真面目な作品を作り上げ、真剣に取り組んでくれた事だけでも大変評価したい。それから、安易なキャラ付けに頼らずに「キャラクター」というよりも「個性」を描くような登場人物の描写なども凄く良かった。自分の中では、口調を変えたり語尾に変な言葉(例えば「~ありんす」とか「~ロボ」とか)付けたり、髪の色や髪型をヘンテコにしたりする事でキャラ付けをする手法が、いかに安易でいい加減な物かを強く感じさせてくれた作品でもある。
あとは、絵の中に描かれた様々な物が緻密に計算されていて、それらによって登場人物や物語がとても丁寧に描かれている点も非常に感心する。
間違いなく「力作」と呼んで差し支えない作品なのだけど…、ただまぁ、あんまりDVDとか売れてないらしいんだけどね、この作品(笑)。
せっかく公式サイトでは、
だが近年の日本アニメは、ロボットや萌えキャラなど、キャラクターの魅力が作品の中心に置かれることが多くなっている。
そんな中、この『よみがえる空』は真っ正面から“物語を語るアニメ”になっている。アニメが本来もっている、物語を語る力。それをこの『よみがえる空』は再び証明してくれるだろう
なんて意気込んでるんだけど。やっぱり、キャラ物の方が売れるのね。
個人的には大好きな作品だし、多分この先ずっと覚えている作品になるだろうと思う。
企画した人はこれにめげず、またこういった作品を生み出していただきたいな、と。
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