ここでは、PC-98エミュレータで用いるためのイメージファイルを、PC-98からエミュレータを動作させるPC(ここではAT互換機を想定していますが)に転送するための手段について述べておきます。なお、これらは2000~2001年ごろ書かれた物に手を加えているので、情報として古い物が混じっている可能性もあります。その辺りについてはご了承ください。
また、このページでは以下の略称を用いています。
FD: フロッピーディスク
FDD: フロッピーディスクドライブ
PC-98エミュレータを扱うためには、FDをファイル化したFDイメージ、BIOSをファイル化したBIOSイメージと言ったイメージファイルが必要になります。これらイメージファイルをPC-98実機上で作成した場合、これをPC-98エミュレータを動作させるPCに転送する必要があります。
ところが、大抵の場合その手段が問題となります。過去のインターフェースとの互換性という面もありますが、PC-98の独自の規格によって転送が困難になる場合があるからです。
ここでは、それらの手段について紹介していきます。なお、転送元にPC-98のMS-DOS、転送先にAT互換機のWindowsを想定しています。
FD
- PCの環境
- 3.5インチFDD (2MODE, 3MODE)
- 必要機器
- 3.5インチFD (720KB, 1.25MB, 1.44MB)
ほとんどのPCが標準で持っているFDDを用いるという、最も基本的な手段です。ただ、最近のPCはFDDが付いてない場合の方が多いので、徐々に使いにくい手段となりつつあります。この手段はもっとも単純に見えますが、実は結構ややこしいです。
FDには幾つかの種類がありますが、ここでは2DD(両面倍密度倍トラック)と2HD(両面高密度倍トラック)という2種類のFDを考えます。これらはPC-98とAT互換機で異なり、PC-98の場合、2DDは640KB(512バイト、8セクタ)、2HDは1.25MB(1024バイト、8セクタ)の容量を持ち、AT互換機の場合、2DDは720KB(512バイト、9セクタ)、2HDは1.44MB(512バイト、18セクタ)の容量を持ちます。一般的に用いられるのは、2HDの方です。
さらに、FDDには2MODEと3MODEという2つのタイプがあり、これもPC-98とAT互換機で一部異なります。2MODEとは、PC-98の場合、640KB、1.25MBのFDを読み書きできる事を示し、AT互換機の場合、720KB、1.44MBのFDを読み書きできる事を示します。また、PC-98の場合は2MODEのFDDでも720KBのFDを読み書きする事ができます。3MODEとは、先程上げたFDを全て読み書きできる事を示します。一般的なPCでは2MODEのFDDを持ってますが、末期近くのPC-98機では3MODEのFDDを持っています。AT互換機の場合、メーカー製はPC-98との互換性を考えて3MODEにしている製品もあります。内蔵やUSB外付けの物も売ってます。
種類 | PC-98 | AT互換機 | ||
---|---|---|---|---|
2MODE | 3MODE | 2MODE | 3MODE | |
640KB | ○ | ○ | × | ○ |
1.25MB | ○ | ○ | × | ○ |
720KB | ○ | ○ | ○ | ○ |
1.44MB | × | ○ | ○ | ○ |
これを踏まえた上で、FDによる転送手段について説明します。
転送元:2MODE、転送先:2MODE
この場合は、双方で読み書きできるFDが720KBのFDしか存在しません。そのため、720KBのFDを用いることになります。しかしこれでは、BIOSイメージを転送する場合ならともかく、FDイメージを転送する上で問題が起こります。PC-98上では多くの場合、1.25MBのFDをイメージ化することになりますが、作成されるFDイメージは当然1.25MB(イメージ形式にもよる。圧縮処理がされる場合もあれば、ヘッダの追加によってそれ以上になる場合も)になるため、容量が足りません。そこで、PC-98上でLHA等のツールを用いて圧縮するか、それでも足りないなら(大抵足りないと思いますが)PC-98、AT互換機(or Windows)の双方で使えるツールか、バッチファイルによる結合が行えるツールによって分割する必要があります。
転送元:2MODE、転送先:3MODE
この場合は、1.25MBのFDを用いる事になります。ただし、1.25MBのFDをべたイメージ化すると、そのサイズは1,261,568バイトですが、FATによってフォーマットされたFDの実容量は1,250,304バイトとなるため、容量が足りません。そこで、上記と同様LHA等のツールによって圧縮する必要があります。
転送元:3MODE、転送先:2MODE, 3MODE
この場合は、1.44MBのFDを用いる事になります。(イメージ形式にもよるかもしれませんが)1.25MBのFDイメージが、FD1枚に収まってしまうので、FDに直接書き込む事ができます。
外部大容量メディア
- PCの環境
- SCSIボード
- 必要機器
- 外付けのHDD、MOドライブ(MOディスク)、SCSIケーブル
外部大容量メディアとは、具体的には外付けのMOやHDDといった物を指します。対応ハードウェアを持っているのであれば、作成したイメージを直接メディアに転送し、転送先でコピーするだけなので、最も簡単な手段となります。
接続にはSCSIを用いる事になりますが、PC-98の場合特別なドライバが無くても、OSでSCSI機器を認識してくれることが多いです。ただし、制約や問題が起こる可能性もあります。例えばMOの場合、メーカー製ドライバが無ければMS-DOS 5.0以降が必要となったり、一般的には540MBのメディアまでしか読めなかったり、機種によってはSCSIのIDが0から連番からになっていなければならなかったりするといった制約があるようです。この辺りは、メーカーのウェブサイトやマニュアル等で確認してください。
余談ですが、SCSI機器を新たに揃える場合、端子の種類に注意してください。一般的なSCSI機器だと、D-Subハーフピッチ50ピンという規格が用いられますが、PC-98だとアンフェノールハーフピッチ50ピンという規格の端子が使われている可能性もあり、この2種類は形がよく似てるので、ケーブルを入手する際には端子をよく確認しましょう。(参考: @IT:ケーブル&コネクタ図鑑:SCSIコネクタ、SCSIケーブル早見表)
RS-232C
- PCの環境
- RS-232C端子
- 必要機器
- リバース結線のRS-232Cケーブル、D-Sub25ピン-D-Sub9ピン変換アダプタ(ケーブル)
デスクトップPCの多くに搭載されているRS-232C(シリアル端子などと呼ばれることもある)を用いて直接転送先に転送する方法です。しかし、RS-232C端子は最近のPCには付いてない事の方が多いです。また、これはちょっと前準備が面倒かもしれません。
まず、PC-98とAT互換機を繋ぐための、リバース結線(クロス)のRS-232Cケーブルが必要になります。それから、PC-98とAT互換機で端子の形状が違い、多くの場合PC-98はD-Sub25ピン、AT互換機はD-Sub9ピンという規格になります。そのため、それらを変換するための変換アダプタ(ケーブル)が必要になります。どちらも大きめの電気屋で1,500円ぐらいです。ジャンク品なら数百円です。なお、RS-232Cにおけるケーブルの最大長は約15mとされているので、その長さに収まるようにしてください。
そして、データを転送するためのツールを入手します。ツールは「TRANSCEIVER」や、「RS-232C Link for MS-DOS」等が適当ではないかと思います。詳しい使用方法は各ツールのドキュメントを参照してください。ちなみに、自分が「TRANSCEIVER」で実験で実験を行ってみたところ、38400bpsの通信速度で、FDイメージ(1,261,568バイト)の転送に、約6分30秒程かかりました。この結果からも分かるように、通信速度にもよりますが転送に多少時間がかかります。事前にファイルを圧縮しておくのが賢明かもしれません。
LAN
- PCの環境
- LANカード
- 必要機器
- LANケーブル
LANを用いて転送する方法です。が、PC-98でLANを使える環境にある人はあまりいないと思われますし、自分自身もPC-98でLANを使用した事が無いので説明は省きます。ただし、もしPC-98側でWindowsが動いているなら、転送はかなり楽だと思います。DOSの場合はどうだか知りません。
その他
ここに挙げた以外にもいくつか方法はあるかもしれません。ですが、ここに挙げた手法は、一般的なPC-98やAT互換機を対象にした手法のつもりなので、これ以外の手法は少々難しい手段になってくると思われます。
参考
PC-98シリーズのフォーマット形式の種類 (答えてねっと)
3.5インチフロッピーのMS-DOSフォーマット
追記
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