長くなったので単体で感想。
最期の「私はバイオリンが好き」という台詞を聞いたとき、「男に告白はなくてバイオリンに告白なんて、こいつぁ想定外で斬新なシナリオだな!」とか思った(馬鹿)。
最初見たときは、「ネオロマンスシリーズという事は、『アンジェリーク』『遙かなる時空の中で』の系統だから、女一人に男が群がる逆ハーレムアニメなんでしょ?」とタカをくくっていた。まぁ実際その通りではあるのだけど、こんなに面白い作品だとは思わなかった。
何が面白いかと言えば、主人公が音楽に惹かれ、徐々に成長していく過程がきちんと描かれている事。役立たず妖精にそそのかされて魔法のバイオリンに出会い、何の気無しに始めたバイオリンだが、音楽に情熱をかける人々に出会い、音楽で人を楽しませる事を知り、徐々にその魅力に取り憑かれて音楽を好きになっていく様子が本当によく描かれていた。内容の本筋が男とイチャイチャする事じゃなくて、あくまでも日野香穂子というキャラクターの成長物語として描かれていた点が、この作品を面白く見せていたのだろうと思う。
またそれによって、音楽に取り組む日野の姿に周囲の人間が徐々に動かされていくという筋立てに説得力があって、「周囲のキャラクターが主人公に惹かれる」という本来の目的(?)に納得がいく。ただ突っ立って綺麗事並べるだけでチヤホヤされるよりも、きちんと主人公が目標に向かって努力して、それに周囲が惹かれていくという過程の方が話として面白い。いや、別に「アンジェリーク」の事を悪く言ってるわけでは…あるんですが。
あとこの作品で感心したのは、演奏のシーンをとても力を入れて描写していた点。音楽をテーマに作品は多くの場合、肝心の演奏シーンで登場人物が「凄い」と言うほどに音楽が凄いと感じないんだけど(個人的に、これは慣れの問題だと思ってる。作品上で「凄い音」として認識させる作品が少ないため)、この作品は聞いた瞬間に「おぉ!」と思えるような演奏があったりして、音楽を素直に良い・凄いと思えた。まぁアニメーションによる演出に助けられたところもあるだろうけど、それを演出できるアニメーターの手腕もかなりのものだと思う。
個人的に面白いと思ったキャラは、長髪の人(柚木)。裏の顔を持ったキャラなんてこの手の作品にはいくらでもいるだろうけど、露骨にデレ要素を見せたり弱みを見せたりするのではなく、裏の顔を保ったままヒロインと対等に付き合うキャラなんて初めて見た。こういうキャラの場合、何か事件が起こって裏の顔が周囲に露呈するも、コンクール参加者は「俺たちはそんな事気にしないぜ!」的な感じで友情を育むような話がセオリーだと思うけど、あくまでも性格を崩さずに接していくパターンがちょっと新鮮だった。
まぁそんなこんなで、この作品はとても面白い作品だったと思い。意外な掘り出し物だったわ。そういえば、いくつかの伏線を放置していたりする辺り、2期とか考えているのかなぁ。個人的には歓迎だけど。
それにしても、妖精は最期まで役立たずだ。
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